光によって、見る角度によって、七色に光る貝殻の美しさ。
そのきらめきを装飾として用いるのが、「螺鈿(らでん)」という伝統技法です。
こちらでは、その美しさの秘密と、初めての方でも取り入れやすい、螺鈿があしらわれた器をご紹介いたします。
螺鈿とは。宝石のように美しい光沢の秘密
螺鈿(らでん)とは、貝殻の内側にある、虹色に輝く美しい部分を薄く磨き、柄や模様を表現する技法。
数ある工芸品の中でも、特に美しいとされる伝統的な加飾(表面の塗装)とされております。
「螺」は螺旋状の殻を持つ貝類のことであり、「鈿」は金属や貝による飾りを意味しています。
引用:武蔵川工房 「螺鈿とは」
材料となる貝には、主に「夜光貝」「アワビ貝」「蝶貝」などを使用します。
貝殻が持つ色彩そのままのこともあれば、色を加えて様々な模様やモチーフをデザインすることもあります。
螺鈿の歴史
螺鈿の歴史は古く、紀元前3000年頃のエジプト文明にまで遡ります。
螺鈿はエジプトの初期王朝以前にすでにそうとう使われ、初期王朝のころにはたいへん立派なものがある。これらの遺品を見ると、やはり貝の美しい部分を切って嵌め込んでいる。
松田 権六『うるしの話』(岩波書店、二〇〇一年) 一四八頁
日本には、9世紀ごろにつたわり、奈良時代・平安時代に盛行した螺鈿。
現代にまで受け継がれるその美しさは、時代や価値観をも超える普遍的なものとして多くの人々に愛されています。
貝の美しさを際立たせる、職人の技術
宝石のように美しい輝きを放つ、螺鈿。
その光沢を生み出すのは、貝殻の持つ魅力を作品に合わせて極限まで際立たせる、職人の技術です。
貝殻を一枚一枚切り抜き、薄く磨き上げることで、貝殻の持つ美しさをそのままに、細かく繊細な模様を表現することができます。
また、貝殻を半透明になるまで磨くことで、貝殻の一面を手作業で着色し、自由な色彩を表現することも可能となります。
以下の動画では、明治43年創業、武蔵川工房の螺鈿職人さんの手仕事をご覧いただけます。
一つとして同じ形のない貝殻、その一つ一つに向き合う職人の丁寧な技が、螺鈿の宝石のように美しい光沢を生み出しているのです。
日常に華を添える、おすすめの螺鈿作品
商品画像:【漆器 山田平安堂】 小筥 籬に菊
豪華絢爛なものから、小さいものまで、その印象的な輝きで多くの作品に華を添えてきた、螺鈿。
螺鈿に興味をお持ちになった方へおすすめしたいのは、螺鈿をワンポイントであしらったお盆やグラスなど、日常にさりげなく添えることができる器。
ふと見惚れてしまいそうな、お気に入りの一品を探してみてはいかかでしょうか。
熟練の技が生んだ、比類なき輝き。インテリアや贈り物にも
熟練の職人の手で生み出された、螺鈿。
まずは、お部屋に迎えやすい、インテリア雑貨のアイテムをご紹介いたします。
大切な方への贈り物としても、華やかな品々ですよ。
息を飲むほど美しい。サクラ螺鈿のフォトフレーム
キラキラと輝く螺鈿が美しいこちらの写真立て。桃色とオーロラ色の2色を使い分けて桜の花びらを表現しています。
朱色のフレームに、鮮やかな螺鈿が映えますね。
華やかな螺鈿の花が咲いた小箱
女性の美しい所作や気品ある姿を、花に例える文化があります。
思わず見入るような、繊細な装飾を施した一品。
螺鈿と蒔絵で贅沢に彩って
国宝「籬菊螺鈿蒔絵硯箱」をモチーフにした、螺鈿と蒔絵の美しさをたっぷりと感じられる品。
蒔絵は、漆の上から金銀粉を蒔くことで模様を表現する、伝統工芸の一つ。
息を呑むようなきらめきの、麗しい香合
茶道具やインテリアとして用いられる「香合(こうごう)」。
こちらは、螺鈿の美しさを心ゆくまで堪能できる、輪島塗の一点物。
胸元に華を咲かせて。遊び心あふれる伝統ラペルピン
ジャケットなどの襟を華やかに彩る、ラペルピン。
こちらは、夫婦円満・長寿のモチーフである鶴の絵柄入り。上品な日本らしさと遊び心がミックスしています。
フォーマルシーンや、プライベートでもお使いいただける上品な仕上がり。
美しい光沢でおもてなし。螺鈿のお盆3選
お客様にお出しするお茶菓子であったり、自分のためのティータイムであったり、思っている以上に出番の多いお盆。
おしゃれ心をくすぐるような螺鈿のワンポイントを加えることで、さり気なくも華やかな演出をお楽しみいただけます。
螺鈿の桜が舞う、朱塗りの丸盆
螺鈿ならではの光沢を生かした、桜が舞う丸盆。
手作業で花びらの一枚一枚に色を乗せているため、表情豊かな桜が美しい。
月夜に輝くうさぎを、螺鈿で
月とウサギがモチーフの丸盆。
耳や手足、ちょこんと可愛らしい尻尾の繊細な仕上がりに、職人の技を感じる一品。
可愛らしい「風神雷神」を描いた丸盆
きらりと光る螺鈿で、可愛らしい風神様・雷神様を描いたこちらの丸盆。
元気に遊び回っているような姿に、思わず微笑みが溢れる仕上がりです。
水面に浮かび上がる輝きを楽しむ、螺鈿のグラス
透き通る海面越しに見た貝殻が美しいように、螺鈿のグラスを日本酒など透明度の高いお飲み物にお使い頂くと、螺鈿の美しさがいっそう際立ちます。
華やかな朱漆か、漆黒の漆か、ついつい悩んでしまいますね。
水面に桜の花びらがきらめくように
グラスの底に螺鈿の桜をあしらった、ガラスと漆塗りによる一品。
真上から、横から、水面越しに輝く螺鈿の桜を楽しみたい。
ガラスが反射し、万華鏡のように広がる螺鈿の輝き
漆塗りと螺鈿の組み合わせが映える、十二角の金付ガラス。
ゆらゆらと揺れる水面越しに輝く螺鈿は、万華鏡のよう。
まとめ
いつの時代でも、その魅力で人を惹きつけてやまない、螺鈿細工の美しさ。歴史が深いからこそ、今では様々な形で身近に取り入れることができます。
同じ貝が2つとないように、貝の個性を活かした作品であるほど、全く同じ柄の螺鈿の作品、というものは作ることができません。
一度手にした螺鈿の作品は、永く大切にお使いくださいませ。