今月の手土産
グラス龍
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扇面額 春秋

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初めて漆器を使う方だけではなく、全員におすすめしているのが平安堂の「めし椀」です。きっと漆器で一番身近に使われているのが、汁椀じゃないかな。熱い味噌汁を入れるのに、手で持っても熱くない木製の汁椀を使う、これは広く普及しています。木製の汁椀があることで、より美味しい状態で味噌汁を味わうことが出来る。だから同じように、お米がもっと美味しくなる重要な器が、めし椀だと僕は思うんです。炊きたてのご飯を盛ったときに、陶磁器でつくられた茶碗だと熱くて持てない、ということが起こってしまう。しかも火傷なんかしてしまったら、せっかくのお食事の時間が勿体ないなと思って。
僕は家が漆器屋だったので、生まれてからずっと、当たり前のようにめし椀を使ってきました。だからこそ、大人になって、社会に出て、陶磁器の茶碗でご飯を食べてみたときに、「漆器のめし椀は絶対、茶碗よりご飯を美味しくしてくれる、いい器!」って、あらためて感じたわけです。

めし椀で特徴的なのは「かたち」。めし椀は、汁椀に比べて口を少し広めに作っています。これは、お箸を斜めに入れてご飯を食べやすいように。逆に汁椀は、ちょっと斜めに傾けてもこぼれないよう、口を狭めてるんですけれどね。また浅めに作ってあるので、お米の最後の一粒まで食べやすい形になっています。
また、こだわりというか、これは決意なんですけれど。めし椀は、あまり普及していないので、汁椀の1/100くらいのマーケットしかないんです。なので、ビジネスを考えたら1種類か2種類しかめし椀を作らないのですが、平安堂ではめし椀をたくさん揃えています。器は選ぶ楽しさがないと面白くないと思いますので、この中から1つ2つ、自分の手に馴染むめし椀をぜひ選んでほしいと思います。将来的には平安堂ならぬ「めし椀堂」が出来るくらい、揃えていきたいですね。

僕の息子も家ではずっと漆器のめし椀を使ってるんです。すると、たまに外食に行くじゃないですか。陶磁器の茶碗で出てくると、息子が「熱いっ!こんなの持てないよ!」って。「漆器のめし椀にしてくれ」なんて、そんなやんちゃを言うんですけどね(笑)。それを聞いて、「あぁ、僕の息子も漆器屋の血を脈々と受け継いでるなぁ…」なんて、しみじみしつつ嬉しかったですね。これって、子供のころから漆器のめし椀を使ってると、子供でもちゃんとその良さが分かるっていうことかなって。
食器を手に取る日本の文化…それは要するに、木でなくちゃ成り立たない。「めし椀を手に持って食べる」というのは、実は日本独自の文化とも言われているんです。そんな文化のある日本で、ご飯を一番美味しい状態で食べられるめし椀を使う。それは歴史が作り出した日本の文化なんですよね。廃れてしまった文化を今の人々にも再認識してもらい、正しいものを作り続けていきたい。そのために、僕はお客さんにめし椀の良さを、これからも伝え続けていけたらなと思います。

お客様に「どのめし椀が一番おすすめですか」と聞かれることが多いです。これは本当に、お客様の好みで、自由に選んでいただければと思います。手にとったら形、重さ、軽さ、薄さ…微妙な形の違いがありますから、「自分の手に馴染むめし椀」を探してもらえたら良いのかな。自分の手に馴染むってことは、自分に合った器ってことですから、それだけ愛着もわくでしょう。「自分の器」っていう感覚も増しますし。そうやって、漆器のめし椀を好きになっていってもらえたら、こんなに嬉しいことはないですね。

最後に僕から一言。今、漆器は使い勝手が悪いなどと、過小評価されてしまっている部分があるでしょう。でも、そういった印象で、最初から漆器を使う、という選択肢を排除してしまうのは、あまりにも勿体ない。漆器を使うことであらわれてくる独特の艶や、長く使うほどわいてくる愛着など、そういうものが漆器を使う楽しみのひとつだと思うんです。お手入れにしても、確かにめし椀はお米がこびりつきやすいですが、少しなら水につけおきができます。陶磁器は、手が滑って落としたら、すぐに割れてしまう。逆に漆器は落としても滅多に割れない。どっちがお手入れが大変か。そうは変わらないはずなんですよね。使って、洗って、おしまい。そんな風に、どんどん思い切って使ってもらえたら嬉しいです。

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